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弓道具を知る

2019.01.24

   

ゆがけの製作について(1)

革の選別

現在、ゆがけに使用されている鹿革は、キョンと呼ばれている中国産の鹿革です。チビ古唐と言われている物で、成獣で大型犬ほどの大きさです。
革の選別は、大変重要で、ゆがけの使用感を左右します。強い弓を引く方のゆがけの革は、厚みのあるコシの強い物を選ばねばなりません。弱い弓を引く方の弽の革は、柔らかく、しなやかな革を選びます。
革は100枚あれば100通りの、革自体の持つ個性があります。手ざわりを感じ、引っぱって伸ばしてみて、裏を見て指先や手のひらから伝わってくる革の個性を見極めます。
長年の経験と勘を研ぎ澄まして、ゆがけにした時の、最適の革を総合的に判断して、選んでいきます。
選んだ革の中から、今度は、お客様のご要望にそった革を再度選びます。
手の寸法をとった時の情報をもとに(人の手は指紋と同じで、同じ寸法、同じ形の人は、なかなかいないと言われています。)
御客様の御要望、弓力、弓歴、男女、年齢、寸法、引き方、くせ、等々、お一人のお客様の為に、10枚程の革を選び出します。その中から…5枚…3枚…そして最適の1枚が選び出されます。
しかし、それでも、納得のいく革が無い場合は、お客様をお待たせすることになっても(2年、3年とお待ちいただく時もあります)次の便で送られてくる革を待ち、選びます。
「この方のご希望のゆがけは、この革でなければ…」と、選びぬきます。
本当に何万枚の革の中から出てきた時はホッとします。お客様の喜ばれる顔を思い浮かべて、作る準備を致します。

 

革の裁断

革は、一枚全てが使用できるわけではありません。鹿革は、背筋の部分のキメが細かく、伸びません。その背筋に、中指の腹面側が当たるようにすると、控を張り込む部分が、革の腹の柔らかいところになります。
傷、穴を避けるために型紙をずらすことはできません。すばらしく良い革であっても、一つの穴や傷があればゆがけには使えません。
使用する物差しは、昔から使われている文ざしを使います。1盛2.5ミリです。とても荒い目盛ですが、目盛の間々に勘と気持ちを入れるのに最適なのです。
「気持ち大きめに」「気持ち小さめに」・・・です。