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弓道具を知る

2019.05.16

   

麻弦の作り方

麻を弦にするためにする作業
月に仕入れた新麻を約一年ほど湿気のない部屋で乾燥させます。それは麻に含まれているわずかな湿気を抜くためです。
その乾燥させた麻を一握りに分け先端を結びます。麻を吊るし、ほぐし、しごく。この作業を何度も繰り返し最も弦にふさわしい状態にします。そしてこれを裂いていきます。その裂いた麻を太さ、張り、なめらかさを見極め撚ります。この撚る職人は50年余りの経験を持った職人です。その為今もこの作業を何人かの職人が日々精進しています。
この撚った弦を特殊の液体に浸し浸透の加減を見極め竹に張り込みます。麻弦の良さを最大限に引き出すよう長年の経験と指先の感覚で張ります。特殊な塗料を付けたヘチマで上下に何度もこき下(おろ)しながら表面を綺麗にしていきます。それを乾燥させもう一度撚りを入れながら張り詰めます。この作業を繰り返し行いそして一晩乾燥させます。
この作業では細い麻を撚り合わせた物を1本の弦にするためにわずかな撚りのずれや角度などに細心の注意を払います。その作業を怠ると弦に仕上がった時に折れ、弦音、矢飛び、耐久性などに影響が出てしまうためです。
次に脂(ヤニ)を弦に塗ります。脂とは松脂にひまし油を入れ煮込み冷まして、脂につやを出すためごま油を少々入れて煮込みます。色が琥珀色になるまで煮詰め、それを季節によって脂の硬さを調節します。一晩寝かし、まぐすねで弦に塗ります。
脂を塗るときに一気に下まで塗ります。その訳は、一度に塗らないと脂の厚さ量などが均等にならないからです。
その弦を竹から外して室(むろ)の中に入れます。室とは素材が檜の筒の事です。室の中に七輪を入れ樫炭で蒸します。そうする事で弦の芯まで脂が染み込み接着力が増し中の空気が泡となって出てきます。それをもう一度張り竹に戻します。そして、まぐすねで余分な脂をとります。
弦は、並寸、二寸伸、四寸伸、三寸詰り(三寸詰め)等々弓の長さに応じ仕掛けを作り、布を巻きそれぞれの弓に最適な弦を提供するように努めます。仕掛けは、弦の伸びを防ぎ弓にかかる負担を減らし弦の寿命を延ばすためにも欠かすことのできない工程です。布を巻き仕上げる場合も布の巻き方、力の強弱等注意しなければならないことが多くあり一つ一つの作業が弓射の良し悪しを判断する、弦音・引き味・矢飛びに影響を与えます。

このような一連の作業は、先人の教えを受け継ぎ継承してきたもので、現在に至っております。
竹弓に麻弦が絶対と多くの弓道家に現在も愛され続けている事は、麻弦の歴史が始まって以来の偉大な先人達の知恵と経験、努力と試行錯誤の積み重ねが実ったものであり、この弦を作る仕事に誇りを持ち次の代に引き継いでいきたいと思います。