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弓道具を知る

2024.12.06

   

弦について

私達は、毎日、弓道で使用される弦や、弓の作製時に必要な親弦(おやづる)を先人から受け継いだ製法や技法で作製しています。

今回、弦について製作者の立場から書くように求められ、拙い文章ながら書かせて頂きます。

私達が考える弦師とは、麻から麻弦を作り出す人のことを言います。

 

麻弦は日本の弓が独自の進化を始めた時(弥生時代頃と聞いています)には、既に存在していたと思われます。

魏志倭人伝には日本の弓の特徴として、上が長く、下が短い、という内容が書かれています。

大きく長い弓の下方を持ち、大きく引く射法は現代にまで続く日本弓道固有の文化だと感じます。竹弓、竹矢、弽、弦はいずれも、日本の自然から授かった材料を加工し、弓道具として使わせて頂き、役割を果たした後、再び自然に返る。

その循環の一部として私達は日々努力しています。私達の役割の大きな部分は先人から受け継いだ大切な物、こと、を後の世代に伝えること、だと思っています。

ここで先人から受け継いだ“弦”の特徴をいくつか記してみます。

 

  • 複数の細い繊維状の材料を撚(よ)りながら、くすね等の樹脂や接着剤等でまとめ固め、1本の弦としている。
  • 上下の弦輪は、射手の方が弓の特徴や射手の好みに合わせて作れるように1本の紐状に加工している。
  • 上下の仕掛部には布等を巻き、弓への負担の軽減と、弦の耐久性の向上としている

 

以上が和弓弦の特徴であり、守るべきことと思っています。

その上で、弦と弓の関係について少し書いてみます。

麻弦等はくすねをかけることにより、弦を締め、耐久性の向上と共に、矢飛びの向上を果たしますが、それだけでなく、製作時から、樹脂、接着剤等を弦内部にまで含ませることにより、弦に一定の重さを与え、弓へのダメージを軽減しています。

軽い矢が弓へのダメージを与えることは、よく知られていますが、矢が弦から離れてからは弦が弓を助けます。

弓師先生の間では、弓の張り込みに使用される親弦は弦製作者が作る弦が愛用されています。親弦製作は大変で難しいので、弓師先生の需要に間に合わない場合があります。

そのような時、代替品として細いワイヤーで弦輪が最初から出来ているタイプの物を使用しますが、弓へのダメージが大きく、従来の親弦であれば弓が不具合の時、弦の方が切れ弓を守りますがワイヤーの場合は弓が壊れてしまうと話されています。

次に弦輪についてですが、弦輪は弓を使用される方が弭(はず)の大きさや、弓の特徴(出来、入来や成りや弦通り)射手の特徴(角見の強弱等)を考えながら作製するものです。(月の輪(下の輪)は最初から作られている弦が多いですが、便宜的に作っているものであり、ご自身で作り直して頂けます)

弦輪は単なる輪ではなく、もじり(ねじり)があることにより弓や射手を助けます。弦を弓に張ると、もじりのある方と逆の方向に弓に力を加えます。

例として、入来の強い弓は、上下共に、右にもじりが来るように作ると更に入来が強くなるのを防ごうとします。出来の場合は逆に、上下共に左にもじりをすると逆の力が働きます。

詳しくは次の機会がありましたら紹介させて頂きます。

 

以上、私達なりの考えや思いを書いてみました。

弓道愛好家の皆様や弓道関係者、弓道具関係者の皆様の応援なくしては、伝統、文化の次の世代への継承はできません。

どうぞこれからも宜しくお願い致します。私達の所属している全日本弓道具協会では、弓道文化と弓道具文化のユネスコへの無形文化遺産登録という、夢のような計画も、数年前から少しずつ取り組んでいます。

私達はこれからも精一杯の弦を作り続けていきたいと思います。

 

このような拙い文章をここまでお読み頂き、ありがとうございました。