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弓道具を知る

2019.01.21

   

第一回 一株の真篠(1)

竹の矢を真篠(ましの)といい、大鳥の羽を真羽(まば)という。真の字をあてたことも、ちょっとおもしろいことである。

竹が矢になるまで

第1図は乾燥。十一月初めから十二月末にかけて切り出された竹は、図の如く、翌年三月まで天日雨露に晒し、幾度か上下に移動して、ムラのできないように充分な管理が行われる。

図1
第3図は選別である。乾燥が済んでから、一本ずつ丹念に竹質、節の位置などの検査を行い、射付節を基準として、一定の長さに切り詰められる。

図3
第2図は棚分け。節の位置によって七種に分類され、更に、竹質、太い細いなど、充分な再検査を行って合否が決定され、同時に、上・中・並と格付けされる。

図2
第4図は、荒矯(あらだめ)といって、最初の火入れである。この荒矯は竹を練ることが主な仕事であって、左右上下と繰り返し練りながら矯を行う。荒矯の済んだ竹は、そのまま数年間保存することができる。

図4

第5図は組み合わせである。いよいよ箆(の)としての第一歩であって、四本あるいは六本など、節、太さ、目方、質、自然生の材料に対してはちょっと無理な注文を付けて丹念に組み合わせる。この組合わせに少しの無理があっても、次の工程削りで不合格になってしまうからである。

図5
第6図は、箆作り。削りである。箆の生命ともいうべき最も重要な工程であって、まず、作ろうとする形に適した材竹の選定が行われ、節削りによって大体の形が決められ、基準によって削り上げられるのである。

図6

補足1 削りの重要性と難しさを示す話に「一削(けず)二矯(ため)三火(び)に四羽(はね)」「一矯二削三火」と伝えられ、矢作製の重要度・難易度を示すものとされています。又、丸い竹と真直な竹は無く、陽表陽裏(ひおもてひうら)のある竹を箆に仕上げる事、易しい事ではありません。

的矢の箆形には、大別して、杉形(すぎなり)、一文字(いちもんじ)、麦粒(むぎつぶ)の三種類がある。形状による性能の差ということが時折話題になるが、形状そのものの考え方に多少の差があるので、専門的にいうとなかなか難しいものである。射術の流派から出たものと、矢の用途から来た考え方とか絡んでいるのではなかろうか。一応区分して考えると分かりやすい。
射の本領として、各流ともに、的中、堅きを貫く、遠きを射る、速いことなど、基本的には共通であっても、そのいずれかを特に重要として射術の基本を身に着けたかによって、自ずから矢の形状に好みが出来る。