ATTRACTION

弓道具を知る

2019.01.24

   

的矢について(1)

箆拵えについては、火色箆、白箆、さわし箆、ぬぐい箆などありまして、火色箆は火入れの時、焼きながら着色したもの、白箆は、火入れの際、こがさぬように生地色のまま仕上げたものです。さわし箆は、火色箆を水田の土中に夏のうちの二ヶ月間程入れ置き、時折、手入れしながら黒く変色させたもの。これを日陰干しにして十分に矯め、漆拭きしたもの。竹を多少変質させることになり、矯めの狂わぬ点では得、その反面、折れやすい損があります。

ぬぐい箆は、薄く火入れ着色したものを数回漆拭きして、火色箆程度まで漆にて着色したもの。以上は昔も現在も、全く同じ技法であります。
徳川時代の的矢の記録で、ちょっとおもしろいことがありますので、少し触れてみましょう。

これは杉形(すぎなり)の矢であります。箆比(のごろ)の極めどころは、箆中節の下で極めます。たとえば、その箆まわり九分五厘の場合、射付はだいたい同じ位で、箆中節から羽中に向かって大分細く、末を箆まわり七分七厘五毛としております。
羽長は矢束の六ッ折半の一ッ分。羽巾は射付の太さによることを基準としております。即ち、箆九分五厘、矢束三尺の矢には、羽長さ四寸四分二厘、羽巾九分五厘となります。
現在の感覚からいえば、羽巾が広すぎるように見えますが、当時は弓の力も違います。また、常に根矢(註5)を射る心得から、つり合いも箆形から見て大分元つり合いになっておりますので、羽巾もこの程度必要でありましょう。
さらに、元矧ぎは箆まわりの四ッ折りの三ッ分。七分一厘余。末矧ぎは間地(末矧ぎと筈巻きの間)を五厘にして六分六厘。筈巻きは四ッ折りの一ッ分、二分四厘。実にうがった割り出し、合理的な方法と見るべきでありましょう。
重い矢、軽い矢、太矢、細矢。それぞれの得失。これは弓との関係、弽との関係、または射手の巧拙、好み、あるいは習慣などもありまして、少し難しいです。
一般論的に見て、重い矢は強弓、新弓、または弣強き弓(註6)、あるいは射手悪癖の出た時などに得。軽き矢は目当て遠きもの、または、弱弓に得。太き矢は中りに得。細矢は目方重くとも軽矢に同じ。小兵に得。
これを組み合わせますと、太く軽矢は中り得、矢走りには損。細き軽矢は矢走りに得、中りには損ということになりますが、矢束、つり合い、箆形など、また弓の形から出る働き、弽との関係など、よくよく吟味する必要がありましょう。

矢束の決めようにいろいろありますが、半身に指三ッ伏せ(三ッ伏せとは、指三本一寸八分が基準)になっております。例えば五尺五寸の人なれば、二尺九寸三分、このようにして計ります。
矢の長さは、筈先から根の肩までをとります。
箆の太さの計りどころは、的矢は箆中節の上で計ることを普通としております。箆中節のあたりを箆の体の中心として腰に例え、押取(おつとり)節のあたりを胸の心得をもって力の均等をとることが、箆作りの基礎になっております。

 

(註5) 矢の根がついている矢。
(註6) 胴が入っている強い弓。